自律神経・難治性の不調

慢性の痛みと睡眠の悪循環|眠れないと痛みが増し、痛みで眠れない脳のしくみ

編集:アンリミテッドヒール京都|公開 2026.09.06編集方針

慢性の痛みを抱える方から、こんな話をよく聞きます。「痛くてなかなか眠れない」「やっと眠れても、朝起きると昨晩より痛みがひどい気がする」「昼間はそうでもないのに、夜になると体がずっしり重く感じる」。こうした体験は、「気のせい」でも「意志が弱い」せいでもありません。痛みと睡眠のあいだには、脳・神経・自律神経が複雑に絡みあった双方向の関係があることが、近年の科学的研究によって少しずつ明らかになってきています。

長く続く痛み(慢性疼痛)を持つ方の多くが、同時に睡眠の問題を抱えているといわれています。そして逆に、睡眠が乱れることで翌日の痛みが強まる可能性があることも、複数の研究が示しています。日本人の慢性疼痛患者を対象にした調査でも、「痛みが強い夜は客観的な睡眠効率が低く、睡眠満足度が高い日の翌朝は痛みが弱い」という傾向が確認されました。「痛みで眠れない→眠れないと痛みが増す→また眠れない」という悪循環が、なかなか改善しない痛みを長引かせる隠れた要因になっている可能性があります。

あなたの痛みが繰り返す理由に、眠りのサイクルが深く関係しているかもしれません。このページでは、痛みと睡眠がどのように互いに影響しあうのか、そのしくみと毎日の生活で実践できる対処法を、院長・日下部望(理学療法士)の監修のもと、わかりやすくお伝えします。

「眠れない」と「痛みが続く」が同時に起きているとき

慢性の痛みがある方の眠りは、さまざまな形で乱れることがあります。痛みで寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝起きたとき体がまだ重くだるい、眠れた時間のわりに「休んだ気がしない」——こうした訴えは、整体の現場でもよく耳にします。

「布団に入ると体が痛くて、どんな姿勢が正解かわからない」「うまく眠れなかった翌日は、いつもより痛みに敏感な気がする」——この感覚は実際に研究で裏付けられつつあります。痛みが睡眠を妨げるのはわかりやすいことですが、睡眠の乱れ自体が翌日の痛みを強める方向にも働くのです。

つまり、「痛み→睡眠障害→痛みの増悪→さらなる睡眠障害…」という悪循環が生じやすく、どちらか一方だけを見ていると、もう一方が改善の足を引っ張り続けることがあります。京都の出町柳周辺には大学や研究機関が多く、深夜まで画面に向かい続ける生活が習慣になっている方も少なくありません。こうした夜型・睡眠不規則な生活が、慢性の痛みとセットで続くとき、回復を難しくしている可能性があります。痛みの場所に着目するだけでなく、「眠りの質」という視点を加えることが、なかなか改善しない不調を変える入口になることがあります。

睡眠の質が変わると、翌日の痛みの感じ方が変わる 眠りの乱れは翌朝の体の状態に影響する可能性があります 睡眠が十分な日 ・脳の痛みフィルターが機能する ・翌朝の痛みが和らぎやすい ・自律神経が整いやすい ・組織の修復が進む 😌 睡眠が乱れた日 ・痛みフィルターが弱まる ・翌朝の痛みが増しやすい ・交感神経が高ぶりやすい ・炎症が収まりにくい 😔
図1:睡眠の質によって翌日の痛みの感じ方が変わる

慢性の痛みと睡眠が互いに影響しあうしくみ

人の体には、痛みをコントロールする生まれつきの仕組みが備わっています。脳幹や脊髄が「痛みの信号をどこまで通すか」を調節する「内因性疼痛調節系(ないいんせいとうつうちょうせつけい)」と呼ばれる仕組みです。この調節システムが正常に働いているとき、ある程度の刺激は「痛み」として強く認識されずにフィルタリングされます。

ところが、睡眠不足や睡眠の質の低下が続くと、このフィルターが機能しにくくなります。脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが乱れ、本来ならさほど気にならない刺激でも「強い痛み」として感じやすくなる状態(痛覚過敏)が生じやすくなります。

さらに、睡眠中には成長ホルモンや抗炎症性サイトカインの分泌が高まり、日中に傷ついた組織の修復が進みます。睡眠が乱れると、この「夜間の修復タイム」が十分に機能しません。また、睡眠と痛みはともに自律神経と密接に関係しており、眠りの乱れは交感神経(緊張・覚醒系)が優位な状態を長引かせ、血管や筋肉の緊張が高いまま朝を迎えることになります。こうした状態は、痛みを感じやすくなる条件のひとつです。

逆に、慢性の痛みがあると深い眠り(ノンレム睡眠・とくにデルタ波睡眠)が得にくくなります。浅い眠りが続くことで、前述の修復・調節機能がさらに低下し、翌日の痛みが増す、という悪化のループが生まれやすくなります。このしくみは「脳と神経」を中心とした広い話であり、腰や肩など特定の部位だけの問題として捉えると、対策が不十分になりがちです。

睡眠と痛みのしくみ:脳の「フィルター」が鍵 睡眠の質が落ちると、脳の痛み調節機能が弱まります 脳の痛みフィルター (内因性疼痛調節系) 質の高い睡眠 フィルターが強まる 睡眠が乱れる フィルターが弱まる 痛みを和らげる 痛みを感じやすくする 翌日の痛みが和らぐ 翌日の痛みが増す
図2:睡眠と脳の痛み調節フィルターのしくみ

痛みが長引く原因は「痛む場所」だけではない

腰や肩、首など特定の場所に痛みがある場合、その部位だけに着目してアプローチするのが通常の流れです。しかし慢性疼痛では、「局所の問題」だけでは説明がつかないことが多くあります。慢性化した痛みを維持する要因は複数あり、それらが互いに絡みあっています。

中枢感作(ちゅうすうかんさ)
繰り返す痛みの信号が続くと、脳や脊髄がしだいに「痛みに敏感」になっていきます。本来なら強い刺激でないと起きない反応が、弱い刺激でも起きるようになり、触れただけで痛い・広い範囲が痛いなど、痛みが「増幅」された状態になることがあります。

自律神経のバランスの乱れ
睡眠障害と慢性疼痛はともに自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスを乱します。本来なら夜は副交感神経が優位になり、体を回復させるべき時間ですが、交感神経が高ぶったまま眠ろうとすると、痛みの感じ方が強まりやすく、眠りの質も落ちます。

心理・情動的な要因
長く痛みが続くと、不安・抑うつ感が生まれやすくなります。心理的な緊張は痛みの感じ方を増幅させ、また睡眠を妨げる要因にもなります。痛みへの恐怖から動かなくなると、さらに筋膜が硬化し、痛みが長引くという連鎖が生まれます。

筋膜の硬化と血流の低下
痛みによって体を動かさなくなると、筋膜(きんまく)が滑りにくくなり、局所の血流が低下します。酸素・栄養が届きにくくなった組織では炎症が収まりにくく、不快感が持続します。これらは単独ではなく、互いに連鎖しながら慢性化を促しています。「痛む場所」ではなく「なぜ痛みが続くのか」という視点で全体を見ることが重要です。

慢性の痛みを長引かせる複数の要因 それぞれが互いに影響しあいながら、痛みを維持します 慢性の痛み の長期化 中枢感作 脳・脊髄の過敏化 自律神経の乱れ 交感神経優位が続く 心理的緊張 不安・回避行動 筋膜の硬化 血流低下・炎症持続 睡眠の乱れ
図3:慢性の痛みを長引かせる複数の要因のつながり

研究でわかってきた痛みと睡眠の深い関係

近年、痛みと睡眠の関係は「どちらが原因でどちらが結果」ではなく、双方向に影響しあうという見方が研究者のあいだで広まっています。ここでは、実際に発表された研究を2つ紹介します。

日本人慢性疼痛患者を対象にした研究(2025年)
山口大学大学院医学系研究科麻酔科の Harada らは、慢性疼痛を持つ日本人患者36名を対象に、7日間にわたりアクティグラフィー(体動センサー)と睡眠日誌を用いて、睡眠と痛みを毎日記録しました [1]。結果として、「就寝前の痛みが強かった日は、客観的な睡眠効率(実際に眠れていた割合)が低下した」こと、さらに「睡眠満足度が高かった日の翌朝は、痛みが有意に弱かった」ことが確認されました。客観的データと主観的評価が必ずしも一致しない点も興味深く、「眠れた気がする」という感覚そのものが、翌日の痛みに影響する可能性が示されています。日本人を対象にしたこの研究は、双方向の関係を日本の臨床現場に引き付けて考える上で重要なエビデンスです。

睡眠不足と慢性疼痛の悪化:酸化ストレスの役割(2024年)
Chen らが発表したナラティブレビューは、睡眠不足が体内の「酸化ストレス」(活性酸素による細胞ダメージ)を高め、これが慢性疼痛の悪化に関わる可能性を詳しく論じています [2]。睡眠を削ると体の抗酸化能力が低下し、神経や筋肉の組織で炎症が収まりにくくなるという分子レベルのメカニズムが提示されており、「睡眠の質を上げることが痛みの改善戦略のひとつになりうる」という方向性を示しています。

これらの研究が示すのは、「痛みを抱えていても、睡眠の質を改善することが、痛みの緩和に直接つながる可能性がある」ということです。痛みへのアプローチと並行して、眠りの質を高める取り組みを加えることが、慢性疼痛の改善において有効な戦略と考えられています。

睡眠満足度と翌朝の痛みの関係(概念図) Harada ら(2025)の研究をもとにしたイメージ。実際の数値は論文を参照。 睡眠満足度が高かった日 翌朝の痛みが有意に弱い 睡眠満足度が低かった日 翌朝の痛みが強い傾向
図4:睡眠満足度と翌朝の痛みの関係(研究結果に基づく概念図)

なぜ「良くなったと思ったら戻る」が起きるのか

整体や薬、休息で一時的に痛みが和らいでも、しばらくするとまた戻る——。この「繰り返し」のパターンには、睡眠の問題が深く関わっていることがあります。

少し楽になったからと、夜更かしや多忙な生活を再開すると、睡眠の質が低下します。すると脳の痛み調節フィルターが再び弱まり、同じ刺激でも「痛み」として感じやすくなります。結果として「また痛くなった」と感じるのですが、これは「治療が効かなかった」のではなく、「睡眠という土台が崩れた」ために起きている可能性があります。

さらに、「また痛くなった」という体験が不安や焦りを生み、その心理的緊張が交感神経を高ぶらせ、夜の眠りをさらに浅くします。浅い眠りは翌日の痛みを増し、また眠れない——という悪循環が定着します。

また、痛みで体を動かさなくなると筋膜が硬化し、血流が低下します。これがさらに不快感・疲労感を生み、夜の眠りを妨げます。「動かさない→筋膜が硬くなる→不快感が増す→眠れない→痛みが増す→また動かせない」という連鎖も、慢性化を支えるひとつの経路です。この悪循環に気づかずに「痛みだけ」に対処し続けていると、なかなか抜け出せない理由になることがあります。

痛みと睡眠が作る悪循環ループ どこかひとつを変えると、ループから抜け出すきっかけになります 慢性の痛みが続く 痛みで眠れない (入眠困難・中途覚醒) 睡眠の質が低下する (浅い眠り・修復不足) 翌日の痛みが増す (痛覚過敏・炎症持続)
図5:痛みと睡眠が作る悪循環ループ

自宅でできる「痛みと眠りの悪循環」を緩めるセルフケア

「完全に痛みをなくしてから眠ろう」ではなく、「眠りの質を少し上げることで、翌日の痛みを和らげる」という視点で取り組むのがポイントです。以下の3つを無理なく続けてみてください。

①寝る前のリラクゼーション習慣をつくる
就寝1〜2時間前からスマートフォンやパソコンの画面を控え、照明を落として体をゆっくり休める時間をつくります。お風呂(38〜40度、10〜15分程度)は副交感神経を優位にして寝つきを助けます。痛みがある場合も、湯船につかることで筋肉の緊張がほぐれ、入眠が楽になることがあります。ただし痛みが強い急性期には無理せず、シャワーに留めることも大切です。

②「寝ている間の痛みを最小化する」姿勢の工夫
横向きで膝の間にクッションや丸めたタオルを挟む、仰向けのときに膝下にバスタオルを丸めて置く——こうした小さな工夫が、痛む部位への負担を減らし、眠りの質を改善するきっかけになることがあります。「正しい姿勢」を求めて体に力が入るよりも、「今夜いちばんラクな姿勢」を探すことを優先してください。

③日中の「ほんの少しの体の動かし方」を積み上げる
長時間同じ姿勢を続けると筋膜が硬くなり、夜の不快感や痛みを増やします。1時間に1回、5分ほど立ってゆっくり歩く、肩や腰をやさしく回すだけで、筋膜の滑りを保てます。出町柳周辺なら、鴨川沿いの平坦な道をゆっくり5〜10分散歩するだけでも、気分転換と体の緊張を緩める効果が期待できます。痛みが強い日は無理せず、立って窓のそばに立つだけでも構いません。

セルフケアの3つのポイント
  • 寝る前の「副交感神経タイム」をつくる(お風呂・照明・画面オフ)
  • 姿勢の工夫で「寝ている間の痛み刺激」を最小化する
  • 日中のこまめな動きで筋膜の硬化を予防し、夜の不快感を積み重ねない
自宅でできる眠りと痛みのセルフケア(3ステップ) 「完璧」より「続けやすい」を優先して取り組みましょう 1 リラックス 就寝1〜2時間前に 画面オフ・照明を落とす。 38〜40度の入浴で 副交感神経を優位に。 体の緊張をほぐす。 2 姿勢の工夫 横向きは膝の間に クッションを挟む。 仰向けは膝下に タオルを丸めて置く。 「今夜いちばんラク」を探す。 3 日中の動き 1時間に1回立って 5分ゆっくり歩く。 肩・腰をやさしく回す。 筋膜の硬化を防いで 夜の不快感を減らす。
図6:自宅でできる眠りと痛みのセルフケア3ステップ

こんなときはすぐに医療機関へ(危険なサイン)

痛みと睡眠の悪循環はセルフケアで緩和できることもありますが、以下に当てはまる場合は、自己判断でセルフケアを続けず、医師の診察を受けてください。

  • 激しいいびきがある、家族から「夜中に息が止まっている」と言われたことがある(睡眠時無呼吸症候群の疑い)
  • 日中に強い眠気があり、会話中や食事中にも眠ってしまうことがある
  • 安静にしていても強い痛みがあり、急激に悪化している
  • 下肢のしびれ・脱力が新たに現れた、または急速に悪化した
  • 排尿・排便のコントロールに異常が出た
  • 発熱・体重の急激な減少など、痛みと同時に全身症状がある
  • 強いうつ症状や希死念慮(死にたいという気持ち)がある
  • 睡眠薬や鎮痛薬などの処方薬を服用中で、眠りや痛みの問題が改善しない

とくに睡眠時無呼吸症候群は、痛みと睡眠の両方を悪化させる隠れた要因になることがあります。大きないびきや、昼間の強い眠気がある方は、内科・呼吸器科・耳鼻科へのご相談をお勧めします。

それでも変わらないときは

セルフケアを続けても「痛みで眠れない」「眠れないから翌日も痛い」という悪循環がなかなか変わらないとき、一人で抱え込む必要はありません。複数の要因が絡みあう慢性疼痛は、専門家と一緒に整理していくことで、出口が見えてくることがあります。

アンリミテッドヒール京都(出町柳駅徒歩1分/院長 日下部望・理学療法士)では、痛む場所だけでなく、「なぜその痛みが続くのか」「日常生活のどこに負担が積み重なっているのか」を丁寧に確認することを大切にしています。筋膜の滑りの状態、自律神経のバランス、日常動作のパターンなど、複合的な要因を整理したうえで、施術の方針を一緒に考えます。

慢性疼痛に対する整体のアプローチには、痛みの一因である筋膜の硬さや動きの偏りを緩和することで、日常生活のしやすさを改善する可能性があると考えられています。効果には個人差があり、特定の結果をお約束するものではありませんが、「変わらない」とあきらめる前に、まず現状をお話しいただくことから始められます。痛みと眠りの問題でお困りの方、ぜひ一度ご相談ください。

まとめ

  • 慢性の痛みと睡眠の乱れは「双方向」の関係にあります。痛みが眠りを妨げるだけでなく、眠りの乱れが翌日の痛みを強める可能性があることが、日本人を対象にした研究でも示されています。
  • 睡眠の質を上げることは、痛みへのアプローチと並行して取り組む価値がある戦略です。寝る前のリラクゼーション、姿勢の工夫、日中のこまめな動きを無理なく続けることが出発点です。
  • なかなか改善しない場合は、睡眠時無呼吸症候群などの隠れた問題がないか医師に確認し、必要に応じて整体など複合的なアプローチを検討することが選択肢のひとつです。

参考文献

  1. Harada H, Matsuo A, Yamashita A, Matsumoto M. Bidirectional relationship between sleep disturbances and pain in Japanese patients with chronic pain: findings from actigraphy and sleep diaries. Sleep Biol Rhythms. 2025. PMC12804536. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12804536/
  2. Chen S, Xie Y, Liang Z, et al. A Narrative Review of the Reciprocal Relationship Between Sleep Deprivation and Chronic Pain: The Role of Oxidative Stress. J Pain Res. 2024. PMC11122178. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11122178/

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的としたものではありません。効果には個人差があり、特定の治療法の効果を保証するものではありません。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。

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