自律神経・難治性の不調

コロナ後遺症の強い倦怠感|休んでも回復しない疲れとの向き合い方

編集:アンリミテッドヒール京都|公開 2026.07.16編集方針

「もう感染はとっくに治ったはずなのに、体だけがずっと重い」——そんな毎日を過ごしていませんか。朝どれだけ眠っても疲れが抜けず、少し動いただけで一日分の電池を使い切ったようにぐったりしてしまう。まわりからは「気のせい」「なまけているだけ」と言われ、自分でも自分を責めてしまう。でも、はっきりお伝えします。それはあなたのせいでも、気持ちの弱さでもありません。コロナ後に残る強い倦怠感は、世界中の研究者が今まさに解き明かそうとしている、れっきとした体の反応です。この記事では、なぜ休んでも回復しない疲れが起こるのか、そのしくみと自宅でできる向き合い方を、できるだけやさしい言葉で整理します。焦らず、一緒に糸口を探していきましょう。

その「休んでも取れない疲れ」、あなただけではありません

コロナ後遺症の倦怠感は、ただの寝不足や働きすぎの疲れとは少し違います。多くの方が口にするのは、「寝ても寝ても回復した感じがしない」「頭に霧がかかったようにぼんやりする」「洗濯物を干しただけで午後は動けなくなる」といった、日常のささいな活動で電池切れになる感覚です。京都の出町柳あたりでも、通勤で叡電や京阪の階段を上るだけで息が上がる、大学へ向かう坂道で足が動かなくなる、といった声を耳にします。以前は当たり前にできていたことができない——その落差そのものが、大きなつらさになります。

やっかいなのは、この疲れが「見た目には分からない」ことです。顔色は悪くない、検査では大きな異常が出ない。だから周囲に理解されにくく、「本当につらいのは自分だけかもしれない」と孤立してしまいがちです。けれど後述するように、コロナ後に倦怠感を訴える人は決してまれではありません。まずは「これは自分の心の問題ではなく、体に起きている現象なのだ」と知ることが、回復への最初の一歩になります。無理に気持ちを奮い立たせる前に、体の側から整えていく視点を一緒に持ちましょう。

こんな困りごと、ありませんか コロナ後の倦怠感でよく聞かれる声。当てはまるほど「休養だけ」では抜けにくいサインです 寝ても寝ても「回復した感じ」がない 少し動いた翌日にどっと悪化する 頭に霧がかかり、考えがまとまらない 立つと動悸・ふらつきが出る 検査では「異常なし」と言われた 周囲に「気のせい」と言われてつらい 当てはまるものが多いほど、無理を重ねるより「体力の使い方」を見直すことが大切です。
図1:コロナ後の倦怠感でよくある困りごとの整理

そもそも「休んでも取れない疲れ」とは何なのか

ふつうの疲れは、一晩ぐっすり眠れば回復します。これは、体が使ったエネルギーを睡眠中に充電し直せるからです。ところがコロナ後の倦怠感は、この「充電機能」そのものがうまく働かなくなっている状態と考えられています。スマホでたとえるなら、バッテリーが劣化して、満充電にしてもすぐ残量が減り、しかも充電に何倍も時間がかかるようなイメージです。だから「たっぷり寝たのに朝から疲れている」という、一見つじつまの合わない状態が起こります。

この疲れの中心にあると注目されているのが、労作後倦怠感(ろうさくごけんたいかん/PEM)と呼ばれる現象です。これは、体や頭を使った「その場」ではなく、数時間〜翌日、ときには二日後にどっと症状が悪化するのが特徴です。買い物や短い散歩、あるいは集中して仕事をした翌日に、まるで熱が出たときのように全身がだるく重くなる。この「後からくる」ずれがあるために、自分でも原因が分かりにくく、つい「まだ動けるはず」と無理を重ねてしまいます。

もう一つ関わるのが自律神経です。自律神経は、心拍・血圧・体温・消化などを自動で調整してくれる、体の管制塔のような存在です。コロナ後はこの管制塔の指令が乱れやすく、立ち上がると動悸がする、体温調節がうまくいかない、寝つけないのに日中は眠い、といった不安定さが倦怠感に重なってきます。つまりこの疲れは、「気力」ではなく、エネルギーづくりと自律神経という体の土台の部分でつまずいているサインなのだと考えられています。

ここで一つ、心に留めておいてほしいことがあります。それは「疲れているのだから、しっかり運動して体力をつけ直せば治る」という発想が、この状態にはかえって逆効果になりうる、という点です。ふつうの体力低下であれば、少しずつ運動量を増やしていくのが回復の王道です。ところが労作後倦怠感がある状態では、負荷を上げすぎると翌日以降にどっと悪化し、かえって回復が遠のいてしまうことがあります。「頑張れば報われる」という当たり前の常識が通用しにくい——ここが、この不調のいちばんつかみにくいところであり、周囲にも理解されにくい理由でもあります。

なぜ「充電」がうまくいかないのか エネルギーを作り、届け、休ませる——どの段階でつまずいても倦怠感につながります ①エネルギーを作る 細胞の発電が 低下しやすい ②全身に届ける 自律神経・血流の 調整が乱れる ③休んで回復 睡眠での充電が 追いつかない 結果として 「たっぷり寝たのに朝から疲れている」という、つじつまの合わない疲れが起こります。
図2:エネルギーを作り・届け・休ませるしくみと、つまずきやすい段階

原因は「気持ち」だけではない——複数の歯車が絡んでいる

コロナ後の倦怠感を「気の持ちよう」で片づけられないのは、体のいくつかの仕組みが同時にずれているからです。ひとつは前述のエネルギー代謝、つまり細胞の中でエネルギーを生み出す小さな発電所(ミトコンドリア)のはたらきの低下です。もうひとつは自律神経の乱れで、これが血流や心拍の調整を不安定にします。さらに、慢性的な炎症のなごりや、血のめぐりの悪さ、睡眠の質の低下なども重なります。どれか一つが「犯人」なのではなく、複数の歯車がかみ合って不調を長引かせているのです。

見落とされやすいのが、体を包む筋膜(きんまく)と血流の関係です。長く動けない状態が続くと、筋肉や筋膜はこわばり、その中を通る細い血管やリンパの流れも滞りがちになります。すると酸素や栄養が届きにくくなり、老廃物も流れにくくなって、体はますます「重く・だるく」感じます。これは「動かないから硬くなる、硬くなるからさらに動けない」という悪循環の入り口でもあります。

ここで大切なのは、痛む場所・つらい場所と、原因の場所が必ずしも一致しないという視点です。「疲れているのは気力の問題」と思い込むと、休養や気合いだけで解決しようとしてしまいます。けれど実際には、自律神経・エネルギー代謝・筋膜血流という土台の部分が関わっている。だからこそ、心を責めるのではなく、体の環境を少しずつ整えていくアプローチが理にかなっていると考えられます。

疲れは「気持ち」だけの問題ではない 複数の要因が中央の「倦怠感」に同時につながっています 休んでも取れ ない倦怠感 自律神経の乱れ エネルギー代謝の低下 筋膜・血流の滞り 睡眠の質の低下 つらい場所と原因の場所は一致しないことも。土台の環境を整える視点が役立ちます。
図3:倦怠感に関わる複数の要因のつながり

研究でわかってきていること

「気のせいでは」という言葉に傷ついてきた方にこそ知ってほしいのが、近年の研究の積み重ねです。まず頻度について。2024年に医学誌Cureusで報告された系統的レビュー(複数の研究をまとめて分析したもの)では、コロナ後に倦怠感を訴える人の割合はおよそ46.6%と報告されています[1]。つまり、感染後に強いだるさが残ること自体は、決して珍しい特別なことではないと考えられます。「自分だけがおかしいのでは」という思い込みは、まず手放して大丈夫です。

次に「なぜ動いた後に悪化するのか」という点です。2024年にNature Communications誌に掲載されたAppelmanらの研究では、コロナ後遺症の患者さんに一定の運動をしてもらい、労作後倦怠感(PEM)を起こした前後で筋肉の状態を調べました。その結果、運動のあとに筋肉のエネルギーづくりの障害や組織の異常が悪化していたことが報告されています[2]。これは、「動けば元気になる」という一般的な常識が、この状態には必ずしも当てはまらないことを示す重要な手がかりです。

さらに、コロナ後遺症の倦怠感は、以前から知られる筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)と多くの特徴が重なることも指摘されており、ある研究では後遺症の患者さんの一定割合がME/CFSの基準を満たしたと報告されています[3]。もちろん研究はまだ発展の途中で、すべてが解明されたわけではありません。ただ確かなのは、この疲れが「怠け」や「気のせい」ではなく、体の中で実際に起きている現象として真剣に研究されている、ということです。

研究が示していること 「気のせい」ではなく、数字と体の変化で確かめられてきています 後遺症で倦怠感を訴える割合 46.6% 系統的レビュー(2024)より =珍しいことではない 運動した後の筋肉 労作後(PEM)に エネルギーづくりの 障害が悪化と報告 =「動けば治る」が 当てはまらないことも
図4:研究で報告されている頻度と、労作後の体の変化

なぜ、良くなったり戻ったりを繰り返すのか

コロナ後の倦怠感がやっかいなのは、調子の良い日と悪い日の波があることです。少し体が軽い日に「今のうちに」とたまった家事や用事を一気に片づける。ところが、その頑張りが数時間後〜翌日の労作後倦怠感(PEM)を引き起こし、そこから何日も寝込んでしまう。回復してまた動けるようになると、遅れを取り戻そうと再び無理をする——。この「良い日には頑張りすぎ、その反動でどっと落ちる」の繰り返しが、回復を長引かせる大きな要因になります。専門的には、この上がり下がりを「プッシュ・クラッシュ・サイクル」と呼びます。

この悪循環にはもう一つの側面があります。強い倦怠感を一度経験すると、「また動いたらあの状態になるのが怖い」と、活動そのものを避けたくなります。すると体力や筋力、自律神経の調整力がさらに落ちてしまい、以前なら平気だった軽い活動でも消耗するようになります。つまり、頑張りすぎても、避けすぎても、どちらも体力の土台を削ってしまうのです。ここから抜け出す鍵は「がむしゃら」でも「安静一辺倒」でもなく、その中間にある活動量の上手な配分にあります。次の章で、その具体的な方法を見ていきましょう。

“戻りやすい”プッシュ・クラッシュの循環 頑張りすぎても、避けすぎても、体力の土台が削られていきます 調子の良い日に 一気に頑張る 数時間〜翌日に どっと悪化(PEM) こわくて動けず 体力が落ちる 回復すると遅れを 取り戻そうと再び
図5:頑張りすぎと反動を繰り返す悪循環

自宅でできるセルフケア——「ペーシング」という考え方

この状態への向き合い方として、国内外で注目されているのがペーシングという考え方です。これは「もっと頑張る」でも「ひたすら安静」でもなく、自分の体力の残量を見ながら、悪化させない範囲で活動を配分していく方法です。ポイントは、症状が出てから休むのではなく、出る前に区切りをつけること。がっかりするかもしれませんが、「まだできる」の一歩手前でやめておくことが、結果的に動ける日を増やしていきます。以下の3ステップから、無理のない範囲で試してみてください。

あわせて、自律神経を落ち着かせる工夫も土台になります。息を吸う時間より吐く時間を長くする呼吸(たとえば4秒吸って6秒吐く)をゆっくり数回。朝は決まった時間にカーテンを開けて光を浴び、体内時計を整える。ぬるめの入浴で体を温め、就寝前のスマホは控えめに。出町柳から鴨川沿いを、息が上がらないゆっくりした速さで数分歩くだけでも、気分転換と軽い血流のうながしになります。大切なのは「頑張って治す」ではなく「消耗させない環境を整える」意識です。

悪化させないための3ステップ 「まだできる」の一歩手前で区切るのがコツです 1 記録する 動いた量と翌日の 体調をメモし、 悪化しない自分の 上限を知る 2 区切る 上限の8割で切り上げ、 こまめな休憩を 先に予定へ組み込む 3 整える 吐く息を長い呼吸、 朝の光・入浴で 自律神経の土台を ととのえる
図6:悪化させないためのペーシング3ステップ
この章の要点:「頑張って治す」より「消耗させない」。①記録して自分の上限を知り、②その8割で区切り、③呼吸・光・入浴で自律神経の土台を整える。小さく続けることが、動ける日を少しずつ増やします。

こんなときは医療機関へ(見逃してはいけないサイン)

セルフケアは大切ですが、それ以前に医療機関での確認が必要な場合があります。倦怠感の陰に、別の病気が隠れていることもあるからです。次のようなサインがあるときは、自己判断せず、まずは内科やかかりつけ医、必要に応じて専門の外来に相談してください。

  • 強い胸の痛み・締めつけ、安静にしていても続く激しい動悸や息切れがある
  • 短期間で体重が大きく減った、発熱が長く続く、原因不明のしこりがある
  • 気を失う(失神)、手足の力が入らない・しびれが片側だけ強い
  • 気分の落ち込みが強く、眠れない・食べられない状態が続く、または消えてしまいたい気持ちがある
  • 倦怠感が日ごとに悪化し、日常生活がほとんど送れない

これらに当てはまらなくても、「いつもと明らかに違う」と感じたら受診をためらわないでください。コロナ後遺症は、まず標準的な医療で他の病気の可能性を確認したうえで、生活の工夫やケアを重ねていくのが基本です。医療機関を受診することは、決して大げさなことではありません。

それでも変わらないと感じるときは

検査では異常がないと言われ、休養やセルフケアを続けても、なかなか手応えを感じられない——。そんなとき、「もう打つ手がないのだろうか」と気持ちが沈んでしまうこともあると思います。私たちアンリミテッドヒール京都(出町柳駅から徒歩1分・院長は理学療法士の日下部望)は、そうした行き場のなさを感じている方の、体の土台を一緒に見直す場でありたいと考えています。

当院ではまず、姿勢・呼吸・筋膜のこわばり・自律神経の傾向といった、疲れやすさに関わる体の状態をていねいに評価します。そのうえで、こわばった筋膜や血流の滞りをやわらげ、呼吸や体の使い方を整えることで、消耗しにくい体の環境づくりをお手伝いします。強い刺激で無理に「効かせる」のではなく、その日の体調に合わせて負荷を抑えることを大切にしています。もちろん、これでコロナ後遺症が必ず治ると断定することはできませんし、標準的な医療の代わりになるものでもありません。医療機関での治療と併用しながら、少しでも動ける日を増やすための一つの選択肢として、無理のない範囲でご利用いただくのが安心です。ひとりで抱え込まず、「体の土台を整える」という視点を持つ相手がいることが、長い付き合いになりがちなこの不調では支えになります。

まとめ

コロナ後の強い倦怠感は、気力や性格の問題ではなく、エネルギー代謝・自律神経・筋膜血流といった体の土台が関わる現象として、今まさに研究が進んでいます。焦って頑張るほど遠回りになりやすいからこそ、「消耗させない」視点で自分の体力と付き合っていくことが、回復への近道になります。

  • あなたのせいではない:後遺症で倦怠感を訴える人は珍しくなく、体に起きている現象として研究されています。
  • 頑張りすぎない:「まだできる」の一歩手前で区切るペーシングが、動ける日を増やす鍵になります。
  • ひとりで抱えない:危険なサインがあれば受診を。合わないと感じたら、体の土台を見直す相談先もあります。

参考文献

  1. Hu W, et al. The Prevalence and Associated Factors of Post-COVID-19 Fatigue: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2024. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11293054/
  2. Appelman B, et al. Muscle abnormalities worsen after post-exertional malaise in long COVID. Nature Communications. 2024. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10766651/
  3. Bonilla H, et al. Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome (ME/CFS) and Post-Exertional Malaise among Patients with Long COVID. 2023. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9844405/

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的としたものではありません。効果には個人差があり、特定の治療法の効果を保証するものではありません。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。

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