「また頭が痛い…でも薬はもう飲みたくない」。そんな思いを繰り返しながら、気がつけば何年も頭痛と付き合っているという方が少なくありません。特に感じやすいのが、頭痛と首・肩のこりがいつもセットでやってくるという事実です。天気が変わるたびに頭が締め付けられる、デスクワークが続くと後頭部がズキズキする、薬を飲めば一時的に楽になるけれど翌日にはまた痛む——そのようなパターンに心当たりがある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
頭痛が「頭の病気」だけから来るわけではないことが、近年の研究でだんだんとわかってきました。首や肩の筋肉、姿勢、自律神経、さらには日常の生活習慣まで、頭痛を引き起こしたり悪化させたりする要因は多岐にわたります。ここでは、慢性的な頭痛と首肩のこりの深い関係を、最新の知見をふまえながらわかりやすくお伝えします。薬に頼りきりにならなくてもよい選択肢が、きっと見えてくるはずです。
つらい頭痛と首こり——あなただけではありません
慢性的な頭痛に悩む人の数は、日本国内だけでも2,000万人以上といわれています。頭痛外来を受診する方の中でも「薬は飲んでいるが改善しない」「仕事や育児への影響が大きい」という訴えは非常に多く、決して珍しいことではありません。
特に多いのが次のような状況です。朝起きたときから頭が重く、コーヒーを飲まないとエンジンがかからない。肩から首にかけてがガチガチに張っており、それに連動して頭の後ろや側頭部が締め付けられる。市販の痛み止めで何とかやり過ごしているが、最近は効きが悪くなってきた気がする。このような「慢性頭痛+首肩こり」のパターンを抱えながら、なんとなく毎日をやりすごしている方はたくさんいます。
慢性頭痛は大きく「緊張型頭痛」「片頭痛」「その混合型」の3つに分けられます。それぞれ感じ方や引き金が異なりますが、どのタイプにも首・肩のこりが深く関係していることが多いのです。まずは自分がどのタイプに近いか、下の図で確認してみましょう。
慢性頭痛の主な3タイプ
首肩のこりとの関係が深いのはすべてのタイプに共通しています
緊張型頭痛
● 両側がじわじわ締め付け
● 首・肩のこりと連動
● 吐き気はほぼない
● 動くと少し楽になる
● デスクワーク後に悪化
最も多いタイプ
片頭痛
● 片側がズキズキ拍動
● 光・音・においで悪化
● 吐き気・嘔吐を伴う
● 動くと悪化しやすい
● 前兆(閃輝暗点)もある
首こりの合併が77%
混合型
● 両タイプが混在する
● 日によって様子が違う
● 薬の効きにムラがある
● 薬物乱用頭痛に移行しやすい
● 慢性化しやすい
対処が最も複雑
図1:慢性頭痛3タイプの特徴——緊張型・片頭痛・混合型、いずれも首肩のこりと深い関係がある
そもそも頭痛はなぜ起きるのか——しくみを知ることが第一歩
頭痛は「頭そのもの」が痛むように感じますが、実際には脳の組織自体には痛覚がありません。頭痛の正体は、頭蓋骨の内外にある血管・神経・筋膜・筋肉に生じる刺激が、脳に「痛み」として伝わるものです。ここでは、特に慢性化しやすい緊張型頭痛と片頭痛のしくみを整理します。
緊張型頭痛の主なメカニズムは、首・肩・頭部まわりの筋肉が持続的に緊張することにあります。デスクワークやスマートフォン操作で頭が前に出た姿勢(いわゆるストレートネック)が続くと、首や後頭部の筋肉は常に過度な負荷を受けます。この状態が長く続くと、筋肉内の血流が低下して老廃物が蓄積し、周辺の神経を刺激することで頭全体を締め付けるような痛みが生まれます。
一方、片頭痛は脳内の神経活動の変化(皮質拡延性抑制)から始まり、三叉神経と頭の血管が炎症を起こすことで激しい拍動性の痛みが引き起こされると考えられています。さらに注目すべきは、三叉神経と頸椎から出る神経(上位頸髄神経)がつながっているため、首の問題が片頭痛を誘発したり悪化させたりすることが起こり得るという点です。首こりと片頭痛が切り離せない理由のひとつはここにあります。
下の図に「首に負荷がかかっていない状態」と「首こり・頭痛になりやすい状態」を比べて示しました。
首の状態と頭痛の関係
頭の重さ(約5kg)をどこが支えているかで、首への負担は大きく変わる
正常なアライメント
● 耳・肩・骨盤が一直線
● 首の筋肉への負担が少ない
● 血流・リンパの流れが良い
● 頭痛が起きにくい状態
首の負担:標準(約5kg相当)
頭が前に出た姿勢
● 耳が肩より15cm前に出る
● 首の筋肉の負担が3〜5倍に
● 老廃物が蓄積しやすくなる
● 頭痛・こりが慢性化しやすい
首の負担:最大20kg相当になる
図2:姿勢と首への負担——頭が前に出るだけで首の筋肉への負荷は数倍に増加する
原因は「頭の中」だけではない——首・肩・あごが影響している
慢性頭痛の厄介なところは、その原因が一箇所に収まらないことです。多くの方が「頭痛は頭の中の問題」と思いがちですが、実際には頭よりも遠い場所が発端になっていることが少なくありません。
まず大きな要因として挙げられるのが、頸椎(首の骨)周辺の筋肉のこりと関節の動きの低下です。首の関節が硬くなると、上位頸髄から出る神経が刺激を受けやすくなり、後頭部から頭頂部にかけての痛みにつながります。これは「頸原性頭痛」と呼ばれ、緊張型頭痛や片頭痛と合併して症状が複雑化していることもあります。
次に、肩甲骨まわりの筋肉の問題があります。肩甲骨を動かす筋肉(菱形筋・前鋸筋・僧帽筋)が弱かったり緊張していたりすると、肩関節の位置が前に引っ張られ(前方突出)、結果として首の筋肉に余計な負担がかかります。デスクワークが続きやすい京都市内の学生や研究職の方に多いパターンです。
さらに、あご(顎関節)の咬み合わせや食いしばりも頭痛の引き金になり得ます。歯を食いしばる習慣は側頭筋や咬筋を緊張させ、こめかみ周辺の頭痛を引き起こします。また、睡眠の質の低下や過度なカフェイン摂取、急激な気圧変化なども片頭痛の誘発因子として知られています。
姿勢・筋肉・自律神経・生活習慣が複合的にからみ合っているため、「頭痛薬だけで解決する」という考え方が行き詰まりやすいのはそのためです。
慢性頭痛に関わる主な原因・部位
「頭の中だけ」ではなく、全身のさまざまな要因が複合的に関わっている
身体的な要因
✓ 頸椎の筋肉・関節の硬さ
✓ 肩甲骨まわりの弱化・緊張
✓ 顎関節・食いしばり
✓ 猫背・ストレートネック
✓ 眼精疲労(PC・スマホ)
✓ 首まわりの筋膜の癒着
生活・神経的な要因
✓ 睡眠不足・睡眠の質の低下
✓ ストレス・自律神経の乱れ
✓ カフェイン・アルコールの過剰
✓ 気圧・気温の急激な変化
✓ 女性ホルモンの変動
✓ 薬の飲みすぎ(薬物乱用)
図3:慢性頭痛の原因は多岐にわたる——身体的・生活的・神経的な要因が複合して症状をつくり出す
研究でわかってきたこと——首こりと頭痛の深いつながり
「首がこるから頭が痛い」というのは長年の経験則として語られてきましたが、近年の科学的研究によってその関係がより明確になってきました。
2022年に発表された系統的レビューおよびメタアナリシス(Fernández-de-las-Peñas ら、Cephalalgia誌掲載)では、片頭痛患者における首こり・頸部痛の合併率が系統的に調べられました。複数の研究を統合した結果、片頭痛患者の約77%に首の痛みやこりが合併していた のに対し、頭痛のない対照群では約23%にとどまったことが報告されています[1] 。この数字は、片頭痛と首の問題が単なる偶然の一致ではなく、強い関連があることを示しています。
また、2023年にPMCに掲載された系統的レビュー(Castien R ら、Healthcare誌掲載)では、緊張型頭痛に対する理学療法の効果を複数のランダム化比較試験(RCT)で検証しました。その結果、マニュアルセラピー(手技療法)や頸部の深層筋のエクササイズが、頭痛の頻度・強度・持続時間を有意に減少させた ことが確認されています[2] 。つまり、首への適切なアプローチが薬以外の選択肢として有効である可能性が示されました。
これらの研究が示唆しているのは、慢性頭痛の管理において首・肩の状態を評価・改善することが非常に重要であるという点です。もちろん、研究によって効果の大きさや確実性はさまざまですが、「首の問題を放置したまま頭痛薬だけで対処する」というアプローチには限界があることが、科学的にも裏付けられつつあります。
首こり合併率の比較(メタアナリシスより)
片頭痛患者は非頭痛者の3倍以上の割合で首の痛みを合併している
片頭痛患者
77%
首の痛み・こり
を合併
n=複数研究の統合
非頭痛者(対照群)
23%
首の痛み・こり合併
出典:Fernández-de-las-Peñas et al., Cephalalgia, 2022(メタアナリシス)
図4:片頭痛患者の首こり合併率77%——頭痛と首の問題は切り離せない関係にある(文献[1]より)
なぜ頭痛は繰り返すのか——薬だけでは断ち切れない悪循環
慢性頭痛が「治った」と思っても、またすぐ戻ってしまう——その背景には、薬だけでは変えにくい悪循環が存在します。この仕組みを理解することが、繰り返しを防ぐための鍵になります。
痛みが出ると多くの人は「楽な姿勢」をとろうとします。しかし頭痛が出たときの「楽な姿勢」とは往々にして、首を前に突き出したり、頭を片方に傾けたりする不自然な姿勢です。その姿勢が首の筋肉をさらに緊張させ、次の頭痛を招くという連鎖が生まれます。
また、鎮痛薬を月に10日以上(トリプタン系は15日以上)使い続けると「薬物乱用頭痛」に移行するリスクが高まります。これは脳が痛み刺激に過敏になる状態で、薬を飲むたびに一時的には楽になるものの、薬が切れると反跳性の頭痛がより強く出るようになってしまう、という深刻な悪循環です。
さらに、頭痛が続くと睡眠が浅くなります。睡眠が浅いと自律神経の回復が妨げられ、翌日の痛み閾値が下がって頭痛が出やすくなる。これもまた断ち切りにくい循環です。「薬を飲んでもよくならない」と感じ始めたとき、それはこの悪循環のどこかに入り込んでいるサインかもしれません。
慢性頭痛を繰り返す悪循環
薬で「一時しのぎ」するだけでは、この循環から抜け出しにくい
首・肩のこりが蓄積
頭痛が発生・悪化
(拍動性・締め付け)
楽な姿勢をとる
→ 首への負担が増す
鎮痛薬で一時しのぎ
→ 薬物乱用リスク
図5:慢性頭痛の悪循環——首こり→頭痛→楽な姿勢→薬だけの対処→さらにこりが蓄積するループ
自宅でできるセルフケア——首・肩へのアプローチで頭痛を減らす
薬以外に日常でできることはたくさんあります。ただし、片頭痛の発作が強いときに首を無理に動かすと症状が悪化することがあるため、発作のない落ち着いた時期に取り組むことが大前提です。
最初に意識したいのは「温める」ことです。お風呂でゆっくり全身を温める(シャワーのみで済ませない)ことで、首肩の筋肉がほぐれやすくなります。特に後頭部から首の付け根にかけての温めは、緊張をほどくのに効果的です。温める際は38〜40℃のぬるめのお湯に10〜15分ほど浸かるのが目安。熱すぎると逆に交感神経が刺激されるため注意が必要です。
次に「ゆっくりとした頸部の動かし方」を習慣にしましょう。椅子に座ったまま、あごを軽く引いてから頭を後ろにゆっくり引き下げるチンタック(顎引き運動)が首の深層筋を活性化します。反動をつけず、痛みが出ない範囲で10秒かけてゆっくり行うのがコツです。一度に何回もやる必要はなく、1日3〜5回で十分です。
そして「肩甲骨まわしと胸を開く動作」を加えることで、肩が前に出た姿勢(巻き肩)を改善し、首への負担を分散させることができます。肩を後ろにゆっくり回す肩甲骨回し、壁に手をついて胸を前に開くストレッチを組み合わせるとよいでしょう。
セルフケアのポイント :片頭痛の発作中は安静が優先。発作がないときに首・肩を「温める→ゆっくり動かす→肩甲骨を開く」の順で習慣にすることで、頭痛の頻度を減らすことが期待できます。
頭痛を減らす首肩セルフケア(3ステップ)
発作のない落ち着いた時期に、毎日少しずつ続けることが大切
1
温める
38〜40℃のぬるめの
お湯に10〜15分。
後頭部・首の付け根
を重点的に温める。
筋肉が緩みやすくなる
2
チンタック
あごを軽く引き、頭
を後ろへゆっくり引く
10秒かけてゆっくり
1日3〜5回目安。
首の深層筋を活性化
3
肩甲骨を開く
肩をゆっくり後ろに
回し、壁に手をついて
胸を前に開くよう
に伸ばす。
巻き肩・首の負担を軽減
図6:頭痛を減らす首肩セルフケア3ステップ——温める・チンタック・肩甲骨開きを毎日の習慣に
こんなときは迷わず医療機関へ——見逃してはいけない危険なサイン
頭痛の多くは慢性的・機能的なものですが、中には緊急の対応が必要な危険な頭痛が隠れていることがあります。次のような症状に気づいたときは、セルフケアや整体でのケアよりも先に、神経内科・脳神経外科・救急外来を受診してください。
突然始まる「これまでで最悪の頭痛」 ——くも膜下出血の可能性があります。雷が鳴ったような突然の激痛は緊急サインです。
頭痛に発熱・項部硬直(首が前に曲がらない)が伴う ——髄膜炎が疑われます。
手足のしびれ・麻痺・言語障害・視力障害が同時に起きる ——脳梗塞・脳出血が疑われます。すぐに救急受診を。
50歳以降で初めて起きた頭痛 ——脳腫瘍やその他の器質的疾患の精査が必要です。
頭痛が週3日以上、3か月以上続いている ——薬物乱用頭痛や慢性頭痛の専門的評価が必要です。
頭を打った後から始まった頭痛 ——硬膜下血腫など外傷性の可能性があります。
起き上がると悪化し横になると楽になる頭痛(体位性頭痛) ——脳脊髄液減少症が疑われます。
これらのサインがなく、すでに神経内科などで頭痛の診断を受けている方は、薬以外のアプローチを並行して試みることで改善が見込める場合があります。判断に迷う場合はかかりつけ医にご相談ください。
それでも変わらないときは——アンリミテッドヒール京都の考え方
医療機関で診察を受け、異常なしと言われたにもかかわらず頭痛が続く。鎮痛薬が手放せないが、このまま飲み続けることへの不安もある。そういった方が、京都市内や左京区・出町柳エリアからも多くご相談にいらっしゃいます。
アンリミテッドヒール京都(出町柳駅徒歩1分)では、院長・日下部望(理学療法士)が慢性頭痛と首肩のこりの関係を全身から丁寧に評価します。特に、頸椎関節の動きの評価、頸部深層筋の機能評価、姿勢・肩甲骨の動きのチェックを通じて、頭痛の「引き金になっている場所」を探します。
施術では、頸椎まわりの筋膜の動きを改善するアプローチ、肩甲骨の位置を整えるケア、自律神経系のバランスを整えるための全身調整などを組み合わせています。薬の代わりに整体をすすめるものではなく、医療と並行しながら日常生活の質を高めていくことを目標にしています。効果には個人差があり、すべての方に同様の変化が出るとは限りませんが、「薬だけでは変わらない慢性的な頭痛と首こり」に対して、新しい視点からのアプローチを一緒に考えていきたいと思っています。
初めての方も、他院に通いながらセカンドオピニオン的にご利用される方も、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
慢性頭痛の多くに首肩のこりが深く関わっている ——片頭痛患者の約77%に首の痛みが合併するという研究報告があります。頭痛を頭だけの問題として扱わず、首・肩・姿勢からのアプローチが重要です。
薬だけでは断ち切りにくい悪循環がある ——痛み→楽な姿勢→さらなるこり→再びの頭痛、さらには薬物乱用頭痛への移行というループを理解し、「温める・チンタック・肩甲骨を開く」の3ステップセルフケアを発作のない時期から継続することが助けになります。
突然の激痛・神経症状を伴う場合はすぐ受診を ——慢性的な頭痛と思っていても、危険なサインを見逃さないことが大切。セルフケアや整体は、医療的な安全確認の後に活用するものです。
出町柳・左京区エリアで、通勤・自転車・デスクワークなどで首に負担がかかりやすい生活をしている方にとって、慢性頭痛と首こりは身近な悩みのひとつです。「薬を飲むしかない」とあきらめず、原因を探る一歩を踏み出してみてください。
参考文献
Fernández-de-las-Peñas C, et al. "Prevalence of neck pain in migraine: A systematic review and meta-analysis." Cephalalgia , 2022. PubMed: 35166137
Castien R, et al. "Physical Therapy in Tension-Type Headache: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials." Healthcare , 2023. PMC10001815
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断・治療を目的としたものではありません。効果には個人差があり、特定の治療法の効果を保証するものではありません。症状が続く・悪化する場合は医療機関にご相談ください。